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俺得設定女優主がBLを眺める話【気象系BL?】

第1章 彼女という女優について


 そうして私たちは中学まで暮らしていた土地を離れ、関東の母の実家へと引っ越した。
 ちょうど新年度に入ろうかという時期だったので、私と双子の弟は、それぞれ身の丈に合った高校へと編入していった。
 私は弟より勉強がよく出来たので、一応は名門と言われる公立に入り、一方私よりずっと芸術の才能がある弟は、美術部が盛んだという私立へ入った。
 手放しで喜べることではないけれど、私たちには父の残してくれたお金があったので、とりあえず高校の心配はあまりなかった。

 母方の祖父母は、それまでは「夏休みに会いに行くおじいちゃんおばあちゃん」だったのが、一転して「同居人」となったので最初は不思議な気持ちだった。
 普段はあまり見ることのなかった「娘である母」が毎日のようにそこにいて、「母を娘とする親」もそこにいて、母は母というだけでなく、誰かの子だったのだなと当たり前のことに気が付いた。
 精神的に少し回復した母は、祖父の紹介で徐々に働きに出るようになった。
 私と弟に、母と祖父母は惜しみなく愛情を注いでくれた。

 そんな、戸惑いながらも一変した暮らしに適応し始めていたある日、私は「スカウト」という青天の霹靂を味わった。
 下校途中に珍しく駅で弟と落ち合い、共に買い出しをして帰ろうとしていたときだった。
 弟が少し面倒そうな輩に絡まれたので、間に割って入って、あまり相手を刺激せず穏便にその場を離れようとしたところ失敗し、弟が殴られそうになったので、庇って少し負傷しつつ、見よう見まねで一応は小さい頃から継続している武道で応戦した。
 武道を習っていたってアニメのように相手を倒したりだとか、そういうことはできないので、避けるか受けるか、ちょっと反撃するか、という程度だった。無傷ではなく、それなりに痛い目にはあった。試合と実践は違うのだ。有段が実戦でも無双だと誰が決めたのか。
 そうこうしているうちに、周囲の人が警察を呼んでくれたらしく、その場は一応収まった。
 私は軽傷を負っていたのでそのまま病院へ行くことになり、弟は軽く事情聴取を受けた。ちなみに相手は逃走した。

 次の日、同じ駅で、私はスカウトされた。
 昨日の件を偶然見ていた事務所の人に、おもしろそうだと思われたのだ。
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