第2章 【気象/山/腐/番組共演】
『まぁバラエティだろうと芸能人なんてみんな演者なんだから、接待の飲み会とでも思って適当に猫被ってきなよ。大丈夫だよ姉ちゃんコミュ障ではないから』
さきほど返ってきたきたラインが思いのほか優しかったので希望が持てる。
筆の進みがいいのかもしれない。
しかし昔からうちの家族、あんまりテレビ見なくて、私も例にもれずテレビ見ないもんだから、ほんとうにバラエティは難しい。
某公共局のニュースが中心で、あとは役者の勉強になりそうなドラマとか映画とかドキュメンタリーしか本当に見ない。
芸能人も詳しくないのだ。
こういう状態になり始めてから、マネージャーの協力のもと歴史の偉人を覚えるように大御所様から最近ホットな人まで勉強しているけど、仕事だからやってるだけで興味はあんまりないから難しい。
共演する人の有名な作品を鑑賞する時間だけが楽しい。勉強になるから。
マジでなんで私テレビ見ないのにテレビ出てるんだろ。
未練なく芸能界引退できそうだよネ、とは弟の言葉である。
マジでそれな。
私としては、機会に恵まれこんな凡骨に仕事を与えてくださるボランティア精神あふれる人がいなくなる日は必ず来ると信じているので資格勉強には余念がない。
お芝居は本当に好きでやりがいはあるけど芸能界は怖いのだ。
著名な監督さんや脚本家さん、役者さんと共演する快感は何度味わってもたまらないけど、それにつけても怖い業界です。
マジで私、あのときオーディションに受かってなかったら普通に大学行って演劇サークルに入って社会人になっても趣味で続ける程度の一般人になっていたと思う。
間違っても再び業界に飛び込むことはなかった。
さておき。
お芝居は別人になるからある意味割り切れるけど、本人として出るテレビは苦手だ。
そんなにきれいでもない絵にもならない、面白くもない、機会と周囲に恵まれてたまたま演技が少々評価されただけの女が、その演技力を発揮できない場所でなにをしろと。
気が重い。
演者だ、猫被ってもいい、と言われても、やはり決められた台詞がないのは心もとない。
「おまたせしましたー」
「あ、はーい!」