第3章 3
「2人共ごめんね?」
和さんがいなくなったタイミングでそう声をかけた
「由梨さんて大物だったんすね」
「え?」
悠くんの言ってる意味がよくわからなくて首を傾げる
「和さんは人気者だけど私はただのヘアメイクだから」
そう。私はただの裏方
たまたま和さんが旦那さんってだけで
「いやー!それでもすごいっすよ!雪乃さんの専属続けてて、旦那さん二宮さんとか。必勝法知りたいっす」
必勝法も何も、私たちは特殊なんだと思う
だって結婚するの知ったの数日前なんだから
それに付き合ってるかもわからない期間1年以上はあった気がする
なんて言えるはずもなく
「ないない!必勝法なんて!」
誤魔化す?というかそんな言葉しか出てこなかった
「……光ちゃん?大丈夫?」
その間光ちゃんはずっと静かで
ちょっと何を考えているかわからなかった
「大丈夫です。…ご飯美味しいですね」
そう言って話題を変えるので、そうなの!悠くんも食べて!と私も同調した
だってこれ以上悠くんに突っ込まれてもボロが出てしまうだけ
それを聞きつけてまた和さんに笑われてしまうのが目に見えていたから
ある程度の時間でお開きになり2人を先に帰らせて和さんのいる卓へ向かう
「(コンコン)失礼します。由梨です」
そう言って戸を開けると少し強引に中に入れられて一杯飲めと注文する羽目に
「「「二宮夫婦にかんぱーい」」」
「いや、なんでなのよ」
呆れ顔半分、笑い半分の和さん
「最近ずっとしっぽり2人飲みばっかりなんでしょ?やっと出てきたんだから一杯くらいいいじゃない」
「そんな熊じゃないんだから」
和さんのツッコミに思わず笑ってしまう
「あ!由梨ちゃんも!たまには付き合ってよね?」
「はい!是非!」
「そんなこと言ってー。どうせまた引き篭っちゃうんだから」
ブーブーと聞こえそうなくらい言われ苦笑いをする
「しょーがないでしょ。だって家帰りゃ飲み仲間がいてつまみあればもう冬眠するって」
和さん。冬眠はもう熊になってしまってます。