第6章 ★薫の秘め事(~P83)
薫はこてん、と奏月の肩に頭を乗せる
「薫さん?」
奏月が心配そうな声を出す
大丈夫、というように薫は小さく首を横に振った
「最近…心が不安定だったんです。お付きの任も解除され、自分の居場所が無くなったようで…」
お付きの仕事には誇りを持っていた
だが突然訪れたその任の解除
他の仕事も責任を持ってやっているが、何だか物足りなかった
そして現れた奏月や、恭子の存在が薫を更に不安定にさせたのだ
「だから…この幸せが夢じゃないといいなぁ、と思いまして」
「ふふっ。貴女も同じでしたか」
「えっ?」
薫は驚いて顔を上げる
「私もつい先日まで八千代様のお付きでしたからね。突然現れた白霧の巫女にその座を奪われたような気になっていました」
「奏月さん…」
「しかし、任期は限られており、いつかは終わりがくるものです。今このタイミングで貴女に会えたのは運命でしょう」
運命ーー
そんな言葉、恥ずかしくて言えないが奏月が言うと様になっていた
「本当はこの領地に来たくは無かったのですが、これが最後の勤めと思ってやってきました。しかし貴女に出会い、私は一生の相手を見つけた」
これがどんなに素晴らしいことかわかりますか?
そう言って奏月は薫の頬を撫でる
言葉にならない薫はただ頷くだけだった
「薫さん。近いうち、貴女を娶らせていただきます。宜しいですね?」
「…はいっ」
涙がこぼれた