第12章 ★桜の秘め事(~P182)
黄の國島
その北側を領地とする黒闇家
分家が更に派生し、もはや過去に本家と同じ血が流れていたのかと疑いたくなる柏木家
黒闇家の本家にお仕えするのは昔から柏木家の仕事だった
桜はその柏木家に産まれ、幼い頃から本家で働いている
今年で十四になる桜は中庭で一人掃き掃除をしていた
北の領地に住まう者は皆、黒闇家の…つまりは鬼の血を引いている
そして、それは何の定めか、昔から女の子があまり産まれないという
その為、桜がこの世に生を受けた時、一週間御祝いが続いたと聞いたことがある
当然記憶には無いが…
女は大切に育てられ、本家に差し出されるのが定石だった
本家の血を絶やさぬため、分家等から嫁ぐことはよくある話だ
次期当主と言われていた八千代に婚約者候補が何人もおり、桜の名前も上がっていた
しかし、八千代は結婚は考えられないと縁談を断り続けていた
桜としても、本家に嫁ぐなんてとんでもないと昔から思ってきたのだ
他にいるわずかな女子は当主の妻の座を狙い、その親は権力を少しでも得ようと徹底的に本家へ送り込もうとする
水面下でわずかな揉め事が起こるのは日常茶飯事だった