第10章 病に勝つのは
ドサッと横になれば、すぐに八千代が覆い被さってくる
重なる唇は熱を持ち、簡単にとろけてしまいそうだ
それなのに…
「……なんだか嫌な予感がするな」
顔を上げた八千代は眉間にシワを寄せた
バタバタと近づいてくる足音が原因だろう
いい雰囲気はすぐにぶち壊されていた
「失礼します、八千代様!」
襖の向こうから声がして八千代は体を起こす
「なんだ騒々しい」
「申し訳ございません。本土へ偵察に向かわせていた者が戻って参りました。至急八千代様にご報告を、との事です」
「わかった。すぐに行く」
小さくため息を漏らし、八千代は困ったように笑った
「悪いな。ちょっと行ってくる」
「いえ、私の事はお気になさらずに」
八千代の邪魔はしたくない
鈴音は笑顔でその背中を見送った
まさか数日間その顔が見れなくなるとは夢にも思わずにーー