第15章 役不足。
ー月島side
部活後、いつも通り山口と帰路を歩いていると見慣れた後ろ姿があった。
「お疲れ様。」
「お疲れ。」
足音を感じてなのか、振り向いた夏蓮と軽く挨拶を交わす。
菅原さんの彼女で、最近は一緒に帰っていたから一人なんて珍しい。
僕の思いは、それだけじゃなかった。
こ れ は チャ ン ス …… ?
どこかで諦めきれない想いが、僕の背中を押すんだ。
「…送る。こんな時間に一人で帰るくらいなら、僕に声かけなよ。」
夏蓮だけでなく、山口君も驚いた表情を見せていた。
まぁ、こんな面倒なことを僕が申し出るんだから、それは驚くよね。
「月島!!!!…さん」
山口との分かれ道に向けて歩いていると、今度は聞き覚えのある、けど聞きたくもない声が聞こえた。
仕方なく足を止めてみると、勉強を教えてくれ、と。
………やだ。
これは面倒なことこのうえない。
でも、山口と夏蓮の押しに負けて、しかたなく部活の前後だけ教えることになってしまった。
分かれ道で山口と別れたあとは、二人きり。
他愛のない会話を交わすうちに、次第に勉強のはなしになった。
「あっ、ねぇ、今度私にも勉強教えてよ。蛍、頭いいし!」
「別にいいけど。」
「ありがとう!」
自然な流れのやりとりだった。
でも、これもまたチャンスであることに間違いない。
僕は、休みの日に誘おうと思った。