第12章 嫉妬。
そして5月6日 AM8:50
私たちは烏野総合運動公園球技場に来ていた。
私は、潔子先輩と荷物を運んでいたところだった。
「はぅあっ!?」
男の人の声が聞こえ、そちらを向いてみると、
音駒のジャージを着たモヒカンの男の人が、私たちを見てあたふたしている。
「山本、ハーゲンダッツ、よろしく。」
「俺チョコね。」
その後ろからひょこっと現れた見知った二人。
またね、ってそういうことだったんだって思った。
「孤爪さん!黒尾さん!」
「よろしく。」
黒尾さんが手をヒラヒラとふりながらニッと笑い、
山本さんと呼ばれた人は泣いてどこかへ行ってしまった。
潔子先輩も先に行ってる、と体育館へと向かっていった。
「この間ぶりですね。音駒だって、教えてくれてもよかったじゃないですか!」
「びっくりさせたかったから。」
「そういうこと。」
孤爪さんの言葉に、同意する黒尾さん。
「俺の彼女に何かようですか?」
三人で談笑していると、後ろから菅原先輩がやってきた。
と同時に、周りにいた人たちの空気が止まった。
もちろん、私も。
うちのマネージャー…ではなく、「俺の彼女」といった。
みんなの前で。
ふぁぁああああああ!
なんて恥ずかしいことを‼
と、菅原先輩の顔を見ると、恥ずかしい、よりも、なんだか切ない表情をしていた。
あぁ、これが俗にいう嫉妬なんだ。
「えーっと…いつの間に?」
そんな空気を一番に破ったのは澤村先輩だった。
菅原先輩はそのまま澤村先輩と旭先輩、そしてなにやら嗅ぎつけてきた潔子先輩に連行され、時間まで尋問されていたらしい。
そして、
「へぇ。おめでとう。」
そういって私の横を通り過ぎる蛍の顔が悲しそうに見えた。