第11章 一つの選択。
月島Side
それはロードワークから帰ってきたときに起きたことだった。
「あれ?日向くんは?」
僕も、日向がどこかに行ってしまったこと自体は気づいてたけど、いつもの単細胞で起きたことだし、自分の地元なんだから帰ってくることもできるとか思って放っておいた。
それを、帰ってきたぼくたちを見て一早くに夏蓮が気づいていた。
「ロードワーク中にどこかに行っちゃったんだよね…。」
「え!?それって大丈夫なんですか?」
「どうだろう…。ま、なんとかなるべ。」
菅原さんと夏蓮が話す場面は最近多く見かける。その度に、気にかかるけど、
…僕には関係ない。
「私、探してきます!みなさんは練習があるし…。」
「悪いな、楠。頼めるか?」
「大丈夫でしょ。気にしなくてもそのうち帰ってくる。」
「でも…。やっぱり、いってくるよ!」
日向を探すと言う夏蓮に部長は許可したけど、行かせたくなくて、行ってほしくなくて、止めた。
悩みはしたものの、行かないって選択肢は初めからなかったんだと思う。
行ってくる、と走って行ってしまった。
その背中を見て、寂しく感じたのは、気のせいじゃないと思う。
まさか、僕が寂しいと感じる日が来るとは思わなかったけど。