第22章 ほたる。
―月島Side
「蛍―!!!!!」
「はぁ!?」
呆然と立ち尽くす僕にダッシュで近づいてきたのは、声で夏蓮だと分かった。
その姿が見えると同時に僕に勢いよく抱き着いてきた夏蓮に驚きながらも、難なく抱き留めることで、小さい女性だと、愛おしいと再確認した。
「蛍、ごめん、好き」
何度目かの「は?」が出そうになることをこらえる。
「何が…?」
まだ、期待してはいけない。
なにが好きか聞いていない。
でも、男としてそれだけ聞いておしまいというのもちょっと嫌だ。
「僕は、夏蓮のことが好きなんだけど。」
あぁ、僕は、弱い。
でも、これがずっと僕がしたかったことだったんだ。
胸がすっと軽くなる。これが、谷地さんの言っていたけじめをつけるってことだったんだ。
夏蓮の答えを聞く前に僕の気持ちを告げると、
ばっと顔を上げて僕を見上げてくる。
僕はばつが悪そうにそっぽむくと、夏蓮はまた僕の胸元へと顔を押し付ける。そして夏蓮がぼそっとつぶやいた。
「蛍のことが、好きです。」
同時に、ふっと懐中電灯の電池が切れたようで、明かりが消える。驚きで僕と夏蓮は顔を見合わせた。
顔の色が赤みがかっているのか、いつも通りなのか、それはわからないけど、
ただ、お互いほほ笑んでいる、ということだけはわかる。
たくさんのほたるが、僕たちを照らしているから。
もう、離さないから。
end