第22章 ほたる。
でも、抱きしめたいと思わない。
髪を撫でてあげたいとも思わない。
なんて非情なんだろう僕は。
「ごめん。別れよう。」
「…はい。」
きっと、うなずきたくなかったんだと思う。返事までの空白の数秒がそれを物語っていた。
「気づいてたよ。全部。
夏蓮ちゃんから受け取ろうと必死だったことも、
夏蓮ちゃんしか名前で呼ばないことも、
全部しっていたから…。
月島君もちゃんと夏蓮ちゃんに言わないとダメだよ。
わき役だって、主役になれるんだよ!」
ぐっと奥歯をかみしめた谷地さんがまっすぐ僕を見る。
夏蓮が誰を思っていようが、関係ないと、その瞳が訴えてくる。
「振られるとわかっているのに、なんでわざわざ言わなきゃいけないの?それじゃただのバカでしょ。」
「そんなこと…、ないよ。月島君のけじめつけないと…、ね?」
それだけ言って、谷地さんは僕を残して家へと歩みを進めた。
僕は追いかけることもできず、ただ立ち尽くして言葉の意味を考えていた。