第22章 ほたる。
―月島Side
菅原先輩と夏蓮が話し込む様子を見て、澤村先輩がみんなに静かに戻ろうと声をかけた。
部屋に戻って着替え終わると、疲れた様子でみんな寝転がっていた。
そんな中、壁に寄りかかっていると、
「蛍、くん!ちょっといいっすか!!」
と、まだ呼びなれない名前を呼ぶ谷地さんに連れられて外に出た。
車の通らない、砂利道を無言で歩き続けていると、急に止まりだす谷地さん。
「やっぱり、私じゃダメですか?」
「は?」
急な問いかけに、間抜けな声が出てしまった。
「タオルも、私が渡したものじゃダメですか?
私のタオルじゃ頑張れませんか?
名前、いつになったら仁花って読んでくれますか?
おにぎり、私が握ったのじゃダメですか?」
俯いてジャージをぎゅっと握り、捲し立ててくる。
こんな谷地さんは見たことがなく、驚いていると今度は震えた声で話し出した。
「ダメ…、だよね。月島君も、ダメだよ。今のままじゃ。…私、辛い…、」
砂利がぽつぽつ雨が降っているかのように濡れていく。
あぁ、谷地さん泣いてるんだ。