第19章 雛鳥。
「…調子がいいときはスローモーションみたいに見えるんです。」
「あぁ、まぁブロックがいつもより見えることはあるな…。」
「青城と練習試合やった時の最後の一点、及川さんの顔が見えました。目が見えました。」
「ああ…そんな気がしたってことか?」
「3対3ではじめて速攻決めた時も、向こう側が見えなした。」
「…だからそれはそんな気がしたってことなんじゃー…」
そんな日向くんとコーチのやりとりを私と菅原先輩はただ黙ってみていた。
コーチの目はあきれ返ったような、驚いているような、そんな目。
日向くんの目は真面目そのもの。
コーチは、日向くんの目を見て、なにか思ったように考え込んでいた。
私は、コーチがその時何を感じたのかわからないまま、
次の試合へと進んでいった。
そして、その話し合いの後からは日向くんは試合から外されてしまった。
けど、コーチが日向くんにいった一言を聞いて、少し安心した。
「でも、お前の言うように、…楠の言うように、あの速攻がまだ進化するなら、俺はそれを見てみたいと思う。
…まぁ何をどうすりゃいいかとか全然わかんねえけど!とりあえず、今までの 打たされている 感覚捨てないとダメだろうし…」
コーチも何とかしようとしてくれているんだ。
日向くん、頑張れ!