第18章 恋する気持ち。
「ねぇ、夏蓮はどんな役やったことあるの?」
ふと、疑問に思ったことを、聞いてみた。
「私かぁ。うーん。マレフィセント、とか?」
「…マレフィセント?」
「そう!主役も言われたけど、どうしても悪役になりたくて。白雪姫に出てくる悪役。…だってさ、悪役だって主人公になれると思わない?」
きっと、物語の主人公にはこういう人が選ばれるんだ。
私は、主役だとかわき役だとか気にしていたけど、ここにいる人たちは、夏蓮や日向は、どんな役だって主役にしてしまうんだ。
その時の夏蓮の笑顔は、ずっとずっと、心の中に焼き付けておきたいと思った。
「日向さん、ちょっといいっすか…」
「いいっすよ…!」
部活前、私は日向に声をかけた。
マネージャーの件についてだ。
「じゃあ、お母さんに言われたから迷ってるの?」
日向の言葉が胸にグサッと突き刺さる。
“何でもいいけど、本気でやってる人の中に入って中途半端やるのは一番失礼なことだからね。”
「でも、谷地さんはやりたいんでしょ?じゃぁやればいいじゃん!」
日向は何でも簡単に言ってしまう。なんでも踏み込んでいってしまう。
私に、その勇気さえあれば迷ってなんかいない…。
日向は山口君に呼ばれて私の前を後にした。
そして部活後も、当然ながら迷っていると、
「じゃぁ言えば?」
と、日向が急に私の手を引いて走り出した。
「こっちであってるよね?」
まるで少女漫画のような…
今だけ、今だけは、私が主人公なんだ。
日向に、騎士にお母さんのもとまで連れて行ってもらっているんだ。
じゃぁ、私が…主人公がやることは、一つ。
「おがあさああああん…」
自分の口で言え、
「村人Bも戦えます!!私、バレー部のマネージャーやるからあああ!」
「そ、そう…がんばって」
「晩御飯は!!」
「うちで食べます」
「了解した!!」
言えた。
私にも、言えたんだ!