第9章 虎探し
男の子は、キョトンとした声で、へ?と云う。
そして、聞けよ!と国木田さんが云っても聞こうとしない二人……いや一人か。
「君、名前は?」
「中島……敦ですけど。」
太宰さんは、歩く。私はその後を追いかける男の子より先に歩く。
「白雪?まあ。ついて来たまえ、敦くん。何が食べたい?」
太宰さんが敦くんに聞く。
「はあ……あの……」
私は、次の瞬間笑ってしまった。
「茶漬けが食べたいです。」
「ぷっ
はっはっは!餓死寸前の少年が茶漬けを所望か!」
「君、餓死寸前だったんだね。それはなんでもいいから食べたいよね。」
私と太宰さんは国木田さんの方を向いて
「「良いよ。国木田君/さんに三十杯ぐらい奢らせよう」」
「俺の金で勝手に太っ腹になるな太宰と白雪!」
敦くんは何か気づいたように
「太宰?白雪?」
「ああ、私の名前だよ。」
太宰さんは敦くんに振り返って
「太宰……太宰治だ。」
続いて私は、
「篠葉白雪。よろしく。」
と云って敦くんに握手する。
私たちは、横浜で一番美味しい茶漬けがある店に行った。