第2章 苦心惨憺【クシンサンタン】
女の顔は随分と腫れが引き、元々はかなりの美貌の持ち主であっただろうと推測される。
そんな女があれ程までに苛烈な暴行を受けたのだ。
恐らくその美貌故に、凌辱も辛酸を極めたのであろう。
……………己を壊して仕舞う程に。
この女は身体だけで無く、心までも蝕まれて仕舞ったのだ。
「この女は安土城に留め置く。」
俺の力強い物言いに皆の視線が集中する。
「素性が判明し、帰る場所が見付かるまで…だ。」
そこには誰一人として異を唱える者は居なかった。
「しかし、名が無いというのも不便であるな。
ふん……
では、これからこの女を『』と呼ぶ事にしよう。」
「……ですか?
何故、その名に?」
不思議そうに問い掛ける秀吉に向かって、俺はにやりと笑って答える。
「意味など無いわ。
只の雰囲気だ。」
一瞬全員が呆けた様な顔を見せたが、
「良い名ですね。
彼女に相応しいです。」
直ぐに三成がにっこりと微笑んだ。
「良し!
これからお前はだ。
、早く元気になれよ。」
そう言って屈んだ政宗にくしゃりと頭を撫でられたは、擽ったそうに身を捩り……
そして花が咲き誇る様な笑顔を見せた。