第8章 堅忍果決【ケンニンカケツ】
それから一月程過ぎたある日、俺はと二人で城下に出掛けた。
「供も連れずと出掛けるなど以ての外」と相変わらず五月蠅い秀吉を宥め賺し
「気晴らしに出るだけだ。
一刻程で戻る。」
そう告げて俺は早々に城を出る。
何の事は無い。
無惨な傷もすっかりと癒え、人前に出ても余計な詮索をされずに済む様になったに、我が城下を見せてやりたいと思っただけの事だ。
何時も通り活気溢れる市を散策するとは嬉しそうに目を輝かせ、俺の手を引き沢山の出店を覗き込んだ。
その中でも美しい反物や見事な細工の簪などを眺める目付きは『やはり女であるな』と思わずには居られない。
だが……
「…其の品が欲しいのか?」
俺がそう声を掛ける度、はふいと立ち上がりその出店を後にしてしまった。
その行動にどんな意味があるのか、俺には全く計り知れない。
一体は何を思い、何を考えているのか?
それでも暫く散策を続けていると、が俺の袖をくんと引く。
「どうした?」
と、その視線の先を追って見れば、其処に在ったのは団子が上手いと評判の茶屋であった。
確かに団子の焼ける香ばしい香りが辺りに漂い食欲を唆られる。
こんな時、秀吉や政宗ならばが行動を起こすより先に茶屋へ向かうのであろう。
こうして度々、俺にはまだ欠けている物があると思い知らされて仕舞うな。
「良し!
団子を食うぞ、。」
の手を引き茶屋に向かえば、も足取り軽く俺に着いて来た。