第1章 邂逅遭遇【カイコウソウグウ】
城へ戻り広間で今回の戦の事後処理について話し合っていると、女の手当てを任せていた家康が溜め息を吐きながら戻って来る。
「あの女の様子はどうだ……家康?」
俺がそう問うと家康は悲痛に顔を歪め、再度大きく息を吐いた。
「酷いもんですよ。」
あの家康がこれ程までに感情を顕にするなど、余程の状態なのであろう。
「顔だけじゃ無くて、身体中に傷があります。
恐らく拷問を受けたのではないかと……。
それから…………」
そこで言い淀んだ家康に俺は「何だ?」と強い視線を向ける。
「女であるが故に受けた傷跡も………」
その言葉に、この場に居る全員が僅かに表情を曇らせた。
「酷え話だな。
女に拷問するなんて、鬼畜の所業じゃねえか。」
「お可哀想に………。」
分かり易く憤怒を見せる政宗と、哀し気に目を臥せる三成。
「あれ程の状態であるとは只の小娘ではあるまいな。
あの女の正体を突き止めるべきでは……」
そう言って光秀は顎に手を当て考え込む。
「何にせよ、この信長様が統治する地で
あんな非道な事が行われているとは許し難い。
このまま放って置く訳にはいきません。」
そして秀吉は俺に向かって高らかに声を上げた。
「あの女の素性云々については貴様達に任せる。
好きな様に動いてみよ。
俺は女の所に行く。」
羽織を翻し立ち上がった俺を止める者は居なかった。