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泥中之蓮~イケメン戦国~

第7章 熱願冷諦【ネツガンレイテイ】


「あ…あと一つ、あんたに頼みてー事があるんだが……良いか?」

「言ってみよ。
 俺に出来る事ならば…だが。」

もう俺は夜中に忍び込んで来た曲者の言う事を当たり前に受け入れている。

それ程迄にこの男は不思議な魅力を湛えていたのだ。

「出来る出来る。
 つーか、あんたにしか出来ねー。」

「一体何だ?」

「十参號を抱いてやってくれ。」

「は?」

俺に振り回された時の秀吉如く、素っ頓狂な声を上げると男は柔らかく微笑んだ。

「だって可哀想だろーよ。
 その身体が知ってる男が彼奴らだけなんてさ。
 滅茶苦茶にされてさ…悦楽も与えられず苦痛だけを叩き込まれて……。
 女ってのはもっと大切に………
 もっと丁寧に愛されるもんなんだって教えてやってくれよ。」

本当は……この男自らがそれを教えてやりたかったのではないだろうか?

そう思ってみても、俺に向けられる男の強い視線は『それは言ってくれるな』と如実に物語っている。

「………相分かった。
 善処する。」

俺の返事を待って、力強く頷いてから

「さーて、本当にもう行かなきゃな。
 血気盛んな独眼竜にでも見付かろうもんなら流石の俺も危ねーわ。」

相変わらずの軽口を叩き、男は立ち上がった。

「じゃーなー。」

そして暗闇に溶け込む様に姿を消す。

その暗闇から聞こえた最後の言葉は……

「織田信長殿……『』の事、宜しく頼みます。」



「信長様っ…たった今、賊が城に侵入したと報告がっ!」

そう叫んだ秀吉と政宗が血相を変えて天主に飛び込んで来た時には、もう既に男が居た痕跡は何一つ残っていなかった。

そんな秀吉と政宗を見やり、俺はくつくつと笑いながら呟く。

「遅いわ………貴様達。」
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