第6章 独弦哀歌【ドクゲンアイカ】
あ、そうそう。
因みに十参號は今年で十八になる。
な、見えねーだろ?
うん、確かに幼顔だよなー。
俺もずっとそう思ってたんだよ。
さて……本題に入るか。
あんたも知ってると思うが、俺達忍びの一族は親も子も、兄弟も無い。
全員が師匠で、全員が弟子…上の者が下を育てて、下が育てばまたその下を…の繰り返し。
そうやって十参號は俺が育てたんだ。
そう聞くと俺達は強い絆で結ばれてると思うだろ?
じゃあ例えば、任務の最中に仲間の誰かが敵に捕われたとする……
さあ、どうすると思う?
命懸けで救う?
はははっ……馬鹿言うなよ。
……………………………見捨てるのさ。
それも完全に。
勿論救いにも行かないし、例え救いを求められても「お前、誰だよ?」って感じで完全に知らん顔。
だから救いを求める奴なんていねーよ。
求めてからされる拒絶ってのは心底厳しいからな。
だったらもう一人で闘って潔く……ってやつさ。
辛いぜ…たった一人で耐え抜くってのは。
いくら鍛錬を積んでるって言ってもさ。
だが辛いのは捕まった奴だけじゃねー。
見捨てた方もかなーり辛い。
何故って?
あんた、もしかして仲間を見捨てた罪悪感に苦しめられて…とか思ってんの?
違う違う。
そんなんじゃねーよ。
罪悪感なんて美しい感情は最初っから持ち合わせちゃいねー。
そうやって育てられるからな。
見捨てた方が辛いのは………見てるからさ。