第4章 天真流露【テンシンリュウロ】
嵐の夜だった。
一刻程前から強い風が吹き始め、壁を打ち付ける豪雨と絶え間なく轟く雷鳴。
俺は褥に横たわり、開いた窓から見える荒れ狂う空模様をぼんやりと眺めていた。
豪雨も雷鳴も嫌いでは無い。
何故なら、露に出来ない己の心内を形にして見せられている様な気になるからだ。
どうせ今宵も眠れないであろう。
ならばこのままじっと、季節外れの嵐の夜を愉しむのも悪く無い。
そんな事を考えていると、天主に向かって駆けて来る小さな足音に気が付いた。
こんな夜更けに一体誰が…?
まさか俺の命を狙う輩が足音を発てるとは思えぬしな。
不審に眉をひそめて、その怪し気な正体の登場を待ってみれば……
からりと無遠慮に開かれた襖の先に立って居たのはであった。
「……どうした?」
声を掛ける俺に気付いたは、心底ほっとした様に表情を緩ませ此方に駆けて来る。
そして褥の中で上半身を起こした俺の身体にしがみ付いた。