第1章 帰って来た従兄弟
名前を呼ばれ、もそもそと布団から顔を出す
リビングから声を上げる母親、明子
無視したかったが、後がめんどくさいことになる
宇菜はあくびをしながらリビングへと向かった
「もぉ、せっかく今日から春休みだっていうのに」
ぶつぶつ言いながらリビングのドアを開ければ、そこには客人がいた
女性と少し年下の男の子
それを見て一気に目が覚める
「よ、葉子さん!?それに大和くん!?」
叔母と従兄弟だ
仕事の都合上オーストラリアで暮らしていたはずだが
「いつ戻ってきたの!?」
宇菜はお茶を飲んでいた二人に駆け寄る
「久しぶりね、宇菜ちゃん。昨日、帰って来たのよ。しばらく見ない間にきれいになって。」
「そうなの!?何で連絡くれなかったのよー」
「ふふっ。驚かせようと思って」
葉子は美しく笑った
年齢より若く見え、とても子供がいるとは思えない程だ
「大和くんも久しぶり!なんか、雰囲気変わったね」
もともと病弱だった大和
髪も肌も瞳も色素が薄く、日本人ばなれしているように見える
おかげでオーストラリアでも簡単に馴染めたと聞いていたが…
「………」
「あ、あれ?大和くん?」
反応がなく、困ってしまう
すると再び明子が声を荒げた
「宇菜!着替えてきなさい!」