第1章 blue
それからだいぶたって
初めて行った画材屋できみを見つけた時は
驚いて思わず笑いが出たほど。
だって、
このおいらが10年以上経っても
覚えていたなんて。
やっぱりきみは変わらず
少し変わった子で
やけにおいらと話が合う。
店に通い詰めるうちに
2人で作業なんかしたりして。
「それは危ないよ、貸して?」
電動ノコギリを
なんの躊躇もなく手にした彼女に
手を伸ばす。
「…ふふ、大丈夫だよ。
私、デンノコ得意なの」
なんて言う女の子は初めてだ。
笑うきみは中学の時の
ふんわりした雰囲気のまま
何も変わらなくて安心した。
何も変わっていないはずのきみなのに
時々見せる困ったように視線をそらす仕草。
赤くなる頬に期待した自分。
少しずつ変わっていくきみへの想いに
最初は少し戸惑ったけど
「すき」
その二文字を彼女から聞いた時に
久しぶりの胸の高鳴りに驚いた。
「歩くのが好き」
伝えられた好きの意味は
おいらの期待とは違う意味なのに。
いつの間にか
きみがおいらの中で大きくなって。