第1章 blue
大野くんはさ、と会話の無い手当中に
彼女が口を開いた。
「…高校、どうするの?」
「ん?望星行くよ、」
そうなんだ、と柔らかく笑うきみ。
「もうすぐバイバイ、なんだね」
とその後に言った言葉は凄く寂しくて
そうだね、と言葉を返すのに
少し時間がかかった。
「頑張ってね、お仕事も」
「え、知ってんだ」
「…あ、うん、ごめん」
「なんで謝るの、ありがとね」
それもそうだね、とまた笑って
消毒の終わった自分の膝を見たきみ。
「上手、ありがとう」
「うん、どういたしまして」
「さ、そろそろおいらも戻ろっかな」と
きみより先に腰を上げると
「大野くん、」と呼び止められる。
「あ、立てる?」
「うん、立てるよ、大丈夫、
そうじゃ、なくてね」
何かを言いにくそうに、
言葉を詰まらせて、やっと出た言葉に驚いた。
「私ね、好きなのは黒板消しじゃ、ないの」
「………うん?あ、そうなの?
そうだよね、あれめんどいもん
おいらも嫌い、白くなるし」
「…うん、それだけ」
「え?ああ、うん、
じゃ、行こっか、教室」
うん、と眉を下げて笑うきみは
やっぱり変わった子で
不思議に思った記憶しかない。