第1章 blue
「大丈夫?」そう言って近づいた。
「え!?お、大野くん!?」
「うん、大野だけど」
「あ、うん、そうだよね」
ほら、なんか変わった人だ。
しゃがむ体操服の彼女が
「…いた、」と言って顔を歪ませる。
曲がった膝から出る真っ赤な血が
まさに今転んだばかりだと言っていた。
「うわ、痛そう…ここ、座んなよ」
彼女の腕を取り
保健室のソファーに座らせる。
「…派手に転けちゃって」と
笑うきみが恥ずかしそうで。
「痛い、よね?」
「うん、少し」
消毒液とガーゼを取って
彼女の目の前に腰を降ろすと
驚いたように目を丸くした。
「だ、大丈夫!自分で出来るから!」
「大丈夫だよ?おいら飼育委員だから
こういうの馴れてる」
「…え?飼育委員、って
手当することなんかある?」
「…あんま、ねえな」
「………」
「………」
2人して沈黙になったけど
そのお陰で
彼女の小さな声で言ったありがとう、が
ハッキリと聞こえた。
「…大野くんこそ、大丈夫?」
「え?あ、なにが?」
「倒れたでしょ?グラウンドで」
「ああ、うんそう、てなんで知ってんの」
「丁度大野くん見てたら、パタンって」
「見てたの?おいらを?」
「……う、ううん、
大野くんの後ろにある体育館を見てたの」
「…体育館、ふうん」
やっぱり彼女は変わってると思う。