第5章 purple
「…亮介さん、遅いよ。
もう遅い」
「うん、そうだね。もう遅い」
「…亮介さんの言う通りです。
私、松本くんが好きです。
…仕事とプライベートは
分けているつもりです。」
「そう?彼はそうでもなかったみたいだよ」
「え?」
「凄く、気にしてた、俺のこと。
早く行ってあげないとね」
「…亮介さん」
「ほら行った行った。俺もすぐ行くから」
「…はい」
今は何も聞いちゃいけない気がした。
亮介さんのその悲しい笑顔の理由も、
今独りの訳も。
いつも私を助けてくれた亮介さん
その亮介さんが苦しそうな時に
私は手を差し伸べずに
自分の幸せへと戻る。
これが正解。
誰の、せいかい?