第5章 purple
「お土産」といっても
北海道とか沖縄とか
オーストラリアとかフランスだとか
そんな旅行の話じゃなくて、
ただ、飲みに行った帰りの
「お土産」であって
つまりはお父さんが酔っぱらった帰りに
買ってくる「寿司」であって。
「…またなんで饅頭?」
松本くんから貰った「お土産」を手にして
眠たそうにソファーに座る彼に問う。
「ん、なんか、旨そうだったから」
「それはまあ…
ありがとうございます」
いや、うん
嬉しいのよ?だけどさ、
女には準備ってもんがあるわけで
急に来て頂きますと…やっぱり戸惑う。
明日もお仕事早いだろうに
わざわざ私の家に寄る時間さえ
もったいないし
そんなに気使ってくれなくて
大丈夫なのに。
やっぱり松本くんは優しい。
「松本くん、
もうお土産大丈夫だから
早くお家で眠りなさいよ」