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君と紡ぐ100のお題

第5章 purple






「ちゃん」


と仕事終わりに声をかけられた。




「亮介さん、お疲れ様です」

「うん、お疲れ様、」


相変わらずの笑顔で、
…私の疲れを吹っ飛ばす気か。

ってバカか私は。




「飲み行くよ」と私が断れないように
荷物を奪う亮介さん。


「あ、ちょっと返して下さいよ!」

先を行った亮介さんが振り向いて
「やだ」と言い、言葉を続けた。


「だってこうでもしないと
 一緒にいてくれないでしょ?」と
フンワリ微笑む。






なんなの、




なんなんだこの宇宙人は。




思わせぶりな言葉ばかりを
投げつけて、
私の頑丈な鍵がグラグラする。





 
「い、行きませんよ!」





背中を向けて歩きだした亮介さんに
立ち止まって叫んだ。



「はいはーい」

「ちょ、りょ、亮介さん!」

「はーい、」

「…………、」



振り向きもせずにゆっくり歩く
亮介さん。

それは私が追い付けるくらいの
距離を保つかのように。

私を試しているかのように。






なんなの、




私の気持ち、知っててわざと言ってますか?

知っててわざとそんなことするんですか?








何も言えずに、
ただ後ろ姿を見つめ立ちすくむ私。

やっと亮介さんが振り向いて
視線が合うと






またあの目に引き込まれる。






大人の上司なのか、
子どもっぽい男性なのか、

亮介さんは何にもくくれない。


そんなよくわからない人なのに






「ちゃん、早くおいで」






とその言葉に胸の奥で
何かが開く音がする。




妻子がある人を

好きになるなんて
不毛すぎる。



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