第3章 gleen
音楽が鳴り、映像が始まり、
嵐5人がワイヤーに吊るされた姿で
スポットライトを浴びる。
櫻井さんの彼女さんは
今どんな思いでこれを見ているんだろう。
あなたも私と同じ思いになったことは
ありませんか?
隣で眠る静かな寝顔を
不思議な気持ちで見つめたことは?
テレビと同じ声が耳元で響いて
生身の人間と偶像の間を行き来する
そんな変な感覚に陥ったことは?
今日のペンライトの海の前に
自分たちの恋はあまりにもちっぽけだと
そんなことを思ったことは、
…ありませんか?
だから私はこの空間に
なかなか脚が運べなかった。
自分が、何故雅紀くんと付き合っているのか
それすらも夢なんじゃないかと
不安で独りぼっちで苦しくなるから。
贅沢な悩みだってことも
ちゃんとわかってるから。