• テキストサイズ

88リクエスト集

第6章 『ブッキングデート』




「うーん。あっちかなぁ。ウリエちゃん、向こうへ探しに行ってみよう?」
「はい」

 寝ている訳ではないだろうが、目を閉じている今がチャンスと言わんばかりに、ラビはウリエの手を引き、リヴァイから死角になる路地へ入る。

(デートに保護者はいらないさ)

「ウリエちゃん。リヴァイさんを探しながら、スイーツ屋さんを見つけたら入ろう」
「え、でも」
「実はあんまり時間が無いんさ。とにかく家には送る。そうしたらリヴァイさんとも合流できる?」
「は、はい。出来ますが……」
「ほんじゃ。スイーツ屋さん! 入ろう!」

 ここ! とラビが示す先にはまごうことなくスイーツ屋さん。パフェにジェラート、パンケーキ。何でも揃っている女子は目が無いスイーツ屋だ。
 入って、食べて。家に送る道でリヴァイさんを探そう。とウリエを諭し、ラビはウリエと共に中に入った。

「ウリエちゃん、何にする?」
「ラビさんのお勧めを」
「じゃあ……」

 ウリエにはパフェを、自分にはジェラートを。
 店員に頼み、話に花を咲かせようと視線をウリエに戻すと、彼女の視線は真っ直ぐ窓の外へ向けられていた。

「俺、こう見えてすんげぇ目が良いんだ。リヴァイさんがこの店の前を通っても見逃さないから」
「はい……」
「……心配さ?」

 先ほどと打って変わって元気を無くしたウリエ。
 ラビはその罪悪感からか、そう聞いた。

「いつも、リヴァイさんから離れてひとりで居ると、不思議なことに迷子になるのです。以前見た、大きなお尻の化け物や、幼い自分とそっくりで名前まで同じ少女に出会ったり、迷子ではありませんがタンスの底で妖精さんに出会ったりと」
「……ウリエちゃん、イノセンスに化かされてる?」
「いのせんす? いえ、たぶん違うと思いますが。いつもリヴァイさんにご迷惑をおかけしてしまうのです」

 しゅん。とテーブルを見つめうなだれてしまったウリエ。
 以前、ラビが彼女と初めて出会った時。仕事仲間である神田ユウと言う男がウリエに、神田のためにと渡された彼女からの手袋を渡して「暖まったら、次は誰かに渡せ」と言った。
 その誰かに思い当たった時のウリエの笑顔は、いつまでも忘れられない暖かな笑顔だった。
 あの神田の言葉、それを渡そうと思い当たったのはきっとリヴァイだ。とラビは思う。

/ 36ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp