第6章 『ブッキングデート』
「ラビさん。行きましょう? お洋服屋さんはあまり行った事がありませんので、楽しみです」
「そうさ? なら、今日はいっぱいかわいい服買ってあげる!」
「ありがとうございます」
(いっぱい……か。ウリエ、高い店に入ると良い。ふん、ウリエがどんな奴かも知らないバカが)
前を歩くウリエとだらしなく鼻の下を伸ばしたラビ。
その二歩ほど後ろをリヴァイは歩く。その視線はじっとりとラビの行動に向けられている。
しかし、ラビはそんなこと気にする余裕はなく、ニコニコと笑顔でとても楽しそうなウリエへ視線を落としっぱなしだ。
フリフリのふわふわで、きゃぴきゃぴな服屋。店の前で二の足を踏んだのは、リヴァイだけ。
「あれ? リヴァイさん、行かないんさー?」
「行って来い、ここで待つ」
ラビの顔を言い表すには、しめしめ。と言う言葉が適当だろう。
リヴァイは、女々しい店の前で待つ気はなく、二人が店内に入っていくのを見届けると、この店を監視できるオープンテラスへと入って行った。
店内では、ラビが見繕った服を体に当て、どうですか? とウリエは楽しそうだ。
「何でも似合う、かわいい!」
「ありがとうございます」
「ウリエちゃんはどんなのが好きさ? ふわふわ? ひらひら?」
「えぇと……」
ウリエが戸惑うのも当然。
彼女が自分で自分のために何かを選んだ事はなく、自分で選んだ唯一の物と言えば、自分の愛馬、ジークリットの馬具だけだ。
服はすべてペトラや他の女兵士のお下がり。ハンジが時折ウリエのためと言って服を買って来てプレゼントしてくれるくらいだ。
リヴァイと街に出かけたとて、行くのは図書館。おしゃれなど必要のない兵団にいるのだ。必然的にこういう店に入る事はない。
「ラビさんの思う服を選んでください」
昔のウリエを彷彿させる言葉だが、よくよく考えた上での言葉。
自分では何が良いのか分からない。初めて見る物ばかりで好きも嫌いも分からない。よく知っている風のラビに任せた方が、上手に仕上げてくれるだろうと踏んでのことだ。