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88リクエスト集

第4章 『温泉』




「忘れておったわけじゃないが、サメはどうした?」
「え? あぁ、ちゃんと言って来ましたよ。もふもふの友人と温泉へ行くって。天狐さんは? えぇと、バン、バンビ。違うな、シカ…シカマ? バンビ丸さんは?」
「シカマル」
「あ、そうそう。シカマルさん」
「むろん、今日は友人と湯へ行くと伝えてはきたが、終始疑わしい視線を寄こして来ておった」

 ザプ。と誰もいないことをいいことに、天狐はまるで水遊び。湯に潜る。
 牡蠣殻は天狐が顔を出すのを待って、口を開く。

「天狐さんが浮気でもするってんですかね?」
「ふん。毎日女と仕事をしておるあっちの方が怪しいだろうにの」

 ぴっぴ! と耳を強く動かし水を払う。

「でもまぁ。彼、あなたにぞっこんじゃぁ?」
「うっくっく。こそばゆいもんじゃのぅ? 蚊帳の外からかように言われると」
「おや、隠しているつもりだったんですか?」
「いんや? 見せつけて、唾を付けて、咬み跡まで付けておかぬと、人はどこでも盛ると聞いたが?」
「うぅん……誰から聞いたんです?」
「えーと。長い白髪で、赤い線が顔にあって、蛙を連れとった」
「……誰ですかね」
「さぁ?」

 ザパ! と二人、湯から身体を出して岩場に腰を掛け、足先だけを湯に浸す。

「人間らしいと言えばシカマルじゃが、牡蠣殻のところの魚の人は獣に似たにおいがするの」
「けもの、ですか。案外間違いじゃないかもしれないですね。ふむ、鮫と名前にあるのに獣と称される。これいかに」
「いかもたこもないじゃろ。時期の雄じゃ」
「……時期って、一応聞きますけど、どの時期です?」
「盛りの時期」
「私が言うのもなんですが。天狐さん。もう少し女性としての恥じらいとか、遠慮とかありません?」
「牡蠣殻相手に必要だと思うか?」
「いえ、まぁ。無いです」

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