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【黒バス】短編

第1章 甘く香る(赤司)


 夏休みが終わって直ぐの九月。
芸術の秋を体現するかの如くもうすぐ文化祭が始まる。
ホームルームの時間を利用する機会も増え、一番に決めなければならない出し物も案外すんなりと決まった。
他のクラスと希望が被ることもなく、文化祭実行委員会からも即決の承諾を貰うことが叶い、今は当日に向けて準備に追われている。
こうして何事もなく希望が通ったのは、ある部活動以外が望むものではないからだった。

 私のクラスが決定した案は、演劇。
演劇部が毎年公演すると決まっているため、わざわざクラスの出し物にしようと思う者はいない。
中学生と言えど本格思考な部活動の演劇が観れるというのに、敢えて内容を被らせて比較されることもないからだ。

 それなのに何故これに決めたかといえば、クラスメイトに逸材がいたからに他ならない。
何せ今をときめくモデル、芸能活動に勤しむ黄瀬涼太が原因だったりする。
優れた容姿を持つ彼が衣装に身を纏う姿を見たいと願う女生徒は数え切れないほど。
よって集客に問題もないだろうと考え、欲も手伝って実行するに至ったわけだ。
おかげで意見が交差し滞ったのは唯一、演目だろう。
あれが似合う、これも見たいと色めき立つ女子の熱い意見交換が一番時間を費やした気がする。
結局は羅列された作品の中から演じる本人、黄瀬が選ぶことで終決したわけだが。

 なんであれ、言いくるめられる形となった当人の黄瀬も、結果的に演じる楽しさを見い出したようで楽しそうに練習を続けている。
これならテレビ画面を通して彼の演技を観る機会だって遠くはなさそうだなんて、台本を眺めながら思った。
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