第3章 03
「でも、話したりとかさ。幼馴染みなら気軽に出来るじゃん」
どうにも納得のいかないらしいクラスメイトが唇を尖らせて言った。
確かに気安く話し掛けることは可能だが、今となってはその機会もない。
苦笑を窓の外へと逃がして俯いた。
「私たちが話してるところ、見たことある?」
特別な位置に立ちながらもその他大勢と変わりない事実を自ら曝け出す物悲しさに耐えるように俯いた私には、幼馴染みという関係がひどく滑稽なものに感じられて仕方がない。
どれほど近しくても本当に欲しい特別にはなれない現実に押し潰されないよう放った声が、震えないように努めることしか出来ない弱い自分が笑えてくる。
嘲笑を吐き出した口から逃がした声なんて溶けて消えてしまえば良いと願う。
けれどクラスメイトにはしっかり届いたようだ。
過去を思い返していた彼女が、そういえばと呟いた。
「ない、かも…?」
自分で生んだ棘が心に深く突き刺さる。
当たり前だ、校内で顔を合わせた過去など片手で数えるほどしかない。
生徒会長として壇上に姿を現す集会なんかで視界に入れる時以外には、何度も言うが、あまり学校内で遭遇することがなかった。
今までを考えれば、きっと残された半年の学校生活でもないだろう。