第1章 終わりの始まり
【ホントは気づいてた 2】
本当は‥‥ わかってたんだ
オマエならきっと
いつまでも、 待ってるって……
普段なら人で溢れ返った入場口
動物園の門は、
見渡せるほど閑散としていて‥‥
雨音だけが、煩く響く
大きな柱に
小さくうずくまる人影が見えた
人影‥‥なんて
アイツだって、ひと目でわかる
ポケットの中で、ギュッと掌を握り締め
ゆっくりと近付いた
気配に気付いた相葉が、顔を上げる
それが、彼女ではないと分かりきった表情をしてるくせに‥‥ 力無い声が聞こえた
「なぁんだ‥‥ニノ‥‥」
苦笑いする相葉の茶色い髪が‥‥ 束になって、次々と雫を垂らす
ドクドクと身体を埋めるのは、高鳴る鼓動と罪悪感
あれだけ、気持ちのない嘘にまみれたセックスをしても
何ひとつ罪を感じはしなかったのに‥‥
「も‥‥トラ、寝ちゃったかな‥‥」
雨に紛れて、アイツの目から、涙が零れるのがわかった
俺は‥‥
ポケットから出した手を
相葉に差し出し、 肩に触れた
「‥‥帰ろ‥‥な?」
俯いたまま、何も言わないヤツの腕をグッと引いて‥‥立ち上がらせた
ふらっとしながらも
俺より視線が高くなった相葉は、か細い声で呟いた
「あんなに好きになった子‥‥初めてだったんだ」
イタイ
ムネガ‥‥クルシイ
コイツが悲しい顔してると、俺まで泣きそうになる
「びしょ濡れじゃん‥‥」
「ふふっ‥‥ニノもでしょ」
泣いてるくせに
何で無理して笑うんだよ
「そんな濡れてちゃ、家の人心配すんだろ?‥‥ウチ来るか?」
雨音に紛れて、
『ん』と相葉の声が聞こえた
何もかも
どこかでわかってた
ホントはずっと気付いてた
トモダチ
なんかじゃなくて
コレは
もっと違う感情なんじゃないかって‥‥
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