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真昼の月 真夜中の太陽 【気象系BL】

第14章 陽のあたる場所


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「ニノぉ、コレはここでいい?」


「んー、
適当に置いといて」




ダンボール箱を抱えた雅紀をチラリと見て、そう指示すると

肩に掛けてたタオルを頭に被って、ぎゅっと結んだ。



大した荷物もないから、ふたりで余裕だったな。




「雅紀、そろそろメシにする?」

「やった!スペシャル唐揚げ弁当は俺んだからねー」

「間違えねーよ(笑)
そんなでっかいの食えねぇって」




片付かないままの六畳の和室は、
男ふたりで向き合って座るとますます狭く感じる。


いただきます!の雅紀の挨拶と共に箸を割って

卵焼きを頬張った。




「......本当に良かったの?」

「何が?」

「マンション。ニノの名義になってたんだよね?

ひとりで家賃とか払ってくの大変だよ?」

「わかってるよ。

でも、いつまでもあそこにはいれねぇだろ」

「そう、だけど」




飲食店のバイトでコツコツ貯めた金が、どうにかまとまった額になって。

築30年の木造アパートに漸く引っ越せた。

ユウさんは、あのマンションを俺名義で購入してくれてたみたいだけど

全てに終止符を打った今、あそこには居るべきではないと思ったし、


早く出て行きたかった。





ずっと考えてたんだ。

雅紀の意識が戻らなくて入院してた頃からずっと。



いつか、


狭くても汚くてもいいからさ。


ふたりで......





「ねぇ、食べないの?

お腹空いてない?」



いつの間にか、既に半分平らげてる雅紀は

俺の弁当を見つめてる。



「なんだよ。足んねぇの?

仕方ねーな」



俺のハンバーグを半分に割って雅紀のメシの上に乗せてやると、大袈裟に喜んでる。



「いいの?いいの?
唐揚げもいいけど、ハンバーグも美味そうだなって思ってたんだよね」


「卑しいなお前(笑)」



笑いながらも、
数ヶ月前の出来事は全く脳裏から消えなくて

コイツとこうして向き合ってる現実の方が、未だに信じられない時がある




半分こして食べてる、ってだけで

態度には出さないけど、

俺にとって夢みたいだった。




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