第10章 夢見る頃を過ぎても
【月虹 3】
雅紀の柔らかい髪が、胸元を擽る
「……あったかいね」
「……ん」
俺の鼓動は、雅紀に届いているだろう
俺にも、
雅紀の音が響いてる
なんて優しくて
ホッとするんだろ
……俺達は繋がる術を知っている
だけど同時に
それが浅はかで意味のない事も知ってる
それでもホントは、求め合ってるの
何もかも忘れて、獣みたいに
ただ、目の前にいるコイツだけを感じたい
理性を吹き飛ばして
何度も何度も
バカみたいに繋がりたい
だけど
俺達は、ただ
お互いの温度を感じながら
いつまでも抱きしめ合ってるだけだった
大事過ぎて
愛しすぎて
怖くて
怖くて
たぶん、
"それ"を知ってしまったら、俺は溶けてなくなってしまうかもしれない
俺はそうなりたいって思ってた
そうなっても構わないって覚悟もあった
だけど、目の前の相手を心底想うほど
……その先に
進めなかったんだ
何より大事だから
きっと、お互いに………
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