第10章 夢見る頃を過ぎても
【戻れない明日】
ー櫻井sideー
漆黒の澄んだ瞳
真っ直ぐな眼差しに、今俺を映してる
確かに好きなのは二宮なのに、……どうして?
「しょーちゃんは…いや?」
「……嫌、つーか、さ」
嘘もつけない、バカ正直なお前が
……いったい何を考えてる?
「…二宮は?好きなんだって、言ってたろ?」
「うん…けどね、気づいたんだ俺。
しょーちゃんといるとね、落ち着くの」
にこにこ笑って、
無防備な顔を見せるから
……不覚にも黙り込んでしまった
「しょーちゃん?」
首を傾けて、"どうしたの?"って顔されてもさ
「やっぱり…やだよね。男どーしだもんね?変だよね」
捨てられた子犬みたいに情けない顔して……
だけど、"ほっとけない"オーラをバンバン出して?
コイツの天性の能力っていうのか、
たぶん、無意識にやってる行動が……人を惹きつける
計算か
本心か……なわけねーか
何かに感づいたのか?
まぁ、どっちにしても
……使えるよね
『俺が、死ねばいいの?』
簡単に死なすかよ
もっと、苦しめ
もっと、もっと、もっと……
まだ全然足んねぇよ
「いいよ。……付き合って、みる?」
優しく笑って、雅紀を見つめた
くしゃっと目尻に皺を寄せて、嬉しそうに顔を綻ばせる
"雅紀が苦しむこと"は
二宮への復讐に繋がる
だけど、さ?
"雅紀が俺の隣で笑うこと"は
もしかしたら、もっと辛いんじゃないかってね?
だって笑ってるんじゃ、
ヒーロー気取って、守ってやることも出来ないからね
大切な人が笑ってるなら、側にいなくてもいいって……
お前は本気で思える?
・