第7章 僕が僕のすべて
【月にオモウ】
ー雅紀sideー
接客中は、普通なら関係者以外入れないという部屋に
ユウさんが会員だからか、詳しい事はわからないけど通して貰えた
そこは、暗い廊下と違い、
違和感を感じるほどの明るい照明で
入って直ぐに飛び込むビジョン
あまりの異世界に、一瞬で身体が強張った
革張りの黒いソファーにたくさんの人達が座っていて
まるで映画でも観るみたいにみんなが見てたのは‥‥
「ッ‥‥」
ガラス張りの向こう
ニノが乱れた制服姿で‥‥男の人と絡んでる
身体を押さえ付けられ、
声を上げ嫌がってんのに‥‥
みんなはそれを、面白そうに見てた
「……っなん…で……」
口を塞ぎ、嗚咽が漏れそうになるのを必死に堪える
見せ物みたいに、
好奇の目に晒されてさ?
どして?ニノが?
『バーカ!』
そう言って笑うニノは
焼きそばパンを一緒に頬張って‥‥
さびぃなって言いながら、空き教室でゲームしてさ
俺がうたた寝したら
体を支えるように背中を貸してくれて
口は悪いクセに、
優しいんだ、アイツ
俺ね
口に出さないけど思った事あんの
空き教室から見えた月
真っ昼間なのにね
白く、その丸い輪郭を縁取ってた
夜はあんなに明るいのにね
昼はこうして
ひっそりと見守ってんだ‥‥
いないようで
ちゃんとここにいるんだなって‥‥
いつの間にか、一緒にいるようになった
ニノみたいだなぁって‥‥
そんなこと言ったら
「存在感ないみたいな言い方すんなや」
なんて、怒られそうだけどね
ゴメンね、ニノ
ゴメンね……
視界がぼやけてなんにも見えない
「や、やめ‥っ‥もう、‥‥くださ‥‥」
嗚咽と共に出した声は震えてて……
もう、真っ直ぐに前も向けなくなった俺の肩に
ユウさんの手が置かれ、
体を支えられるように、その部屋を後にした
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