第1章 はじまりの日
「お勤めご苦労さま。」
その声でアレクの気配に気づき顔をあげたが、皇子とわかった途端、立ち上がり頭を下げる。
平民は王家の姿を見るとまるで主人を怯える犬の様な姿になる。王家に逆らったり、お気に召されないと殺されても文句を言えないからだ。
その姿を見てアレクは毎回、絶対王政は最高なものだなと心の中で嗤う。
「花瓶も落とされてかわいそうだなー。いったい誰がやったんだろうね。そうそう、メイドさんお名前聞いてもいいかな?」
「あ……」
「ん?聞こえないよもっとはっきり喋ってくれないかな?」
「…っ……」
いつまでたっても名前を名乗らないメイドに更に苛立ちを覚えたアレクは、メイドを壁まで追い込み左手で顎をくいっと上げ、右手で壁に手をつける。
「言うこと聞けない悪い子だね。…ん?あぁ、そう言えば平民は俺に口聞けないんだったな。特別に名前だけなら声出していいぞ。」
「…牡丹です。アレク様。」
アレクはニヤリと笑い、牡丹の唇にキスを落とした。牡丹はびっくりして口を開けたままアレクを見上げる。まさか、王家が平民に触れるなんて…。
「牡丹俺の夜の相手をしろ。これは命令だ。意味はわかるだろ?ん?」
アレクは牡丹の腕を掴み自分の部屋まで連れて行き、ベッドに突き飛ばした。