第4章 導きの星は誰を照らす
夜、ははさまと一緒に今日も休むことになった。
「そういえば、ウィスタリアの王様からプリンセスのお話を聞いたよ。白い花がプリンセスに幸せを運んできたって」
「・・・・白い花?」一瞬だけ母の顔が強張った様な気がした。
「うん。お城にある白い花を採りに来た女の人がプリンセスに選ばれて、隣国の王様のお嫁さんになったんだって」
「素敵なお話ね。でも、昨日聞いたお話では、プリンセスは行方不明なのよね?」「うん。だから毎日城門に添えられる花を加工してお城に飾ってたの。」「あら、それは華やかねー。花のお城なんてそうないわ。」むしろ、花飾り過ぎて花屋に転職したのかという感じだったが敢えて言わないでおく。そろそろ寝る時間だとばかりに母は優しく背を叩いてくる。
「みんな、プリンセスを待ってるのにどうして、プリンセスは帰って来ないのかな?」眠気に誘われながらふと、疑問が過ぎり夢うつつに母に聞く。「・・・・どうしてかしらね。」
「恥ずかしいのかな?」思った事を口にすると柔らかな笑みが母から溢れた。「そうかもね。」「ははさまはどう思う?」
僕を包んでいた腕が強張った。
「さぁね、きっと————・・・・、」
ほっそりとした弓張月の光が差し込む薄暗さが残る寝室に妙齢の女がいた。
月明かりを受け光輝く白銀の髪は顎下までと年頃にしては童髪と呼ばれる分類。髪に覆われて瞳は見えないが、幼子の頭を撫でる手つきの優しさからとても優しい光を宿しているとわかる。
「・・・・か」女は先程幼子に言った答えを紡ぐが本当のところ、自分でも分からなかった。どうしてあんな事を言ったのか。
月明かりに照らされても尚暗い、夜闇の様な髪、瞳は宵の帳を思わせる深紫。あどけなさが残るも、顔は恋しいあの人に瓜二つ。
何度、この子に助けられた事だろう。恋しい人に会えぬ夜も、懐かしい故郷を思う日もこの子がいたから癒され、懐かしさだけが胸に残った。
愛しさが溢れ堪らず頬に唇を寄せる、愛くるしい笑顔と私を呼ぶ甘やかな声音が耳を伝うも本人は夢の中の様だ。
「良き夢を、愛しい子」
ルプスが寝息を立てているのを確認して、私は寝室を出た