第4章 導きの星は誰を照らす
「それじゃあ、俺が見た白い狼はその若者の子孫かな?」
「さてなぁ、あるいは若者自身かもしれない。狼は驚くほど賢い森を知り自然と共に生きる。けっして人に服従しないが情に厚い。傷ついた仲間に餌を与えるなど自然界では非常に珍しい。己を介抱した者を決して忘れない。
そして・・・・」
チラリと奥の部屋を眺める婆につられて、覗くと2匹の狼が仲睦まじく毛づくろいをしていた。そのうちの1匹はお腹が大きい。
「伴侶を大事にする。身重の時は進んで狩りに出、子が生まれたなら共に育てる・・・。」父性に満ちた穏やかで威厳ある姿に少しさみしさを覚える。
「群れの長が妻を娶り唯一の夫婦となる。まぁ強さによって長が変わらぬ限り生涯連れ添う。浮気もしない・・・人より誠実だな・・・。『ルプス』や、お前の母御はお前に幸福を願いその名をつけた自然に生き、強く、幸福である様に
狼は消して、恐ろしく、嫌われているだけではないぞ」
「・・・・はい」
「お前は不思議だ。他国では白き獣を神の遣いとされている。特に白狼は王者が善政をし仁徳ある時現れるとも言う。 お前が白き獣を従えているのも何か意味があることなのかもしれんな。」「・・・・・・・・・。」
空から甲高い鳥の声が聞こえてきたレグルスの声だ。
「迎えが来たようだね。行っておあげ」
ルプスは婆に一礼をして家を出ていく。
その姿をまぶしげに見つめる・・・。
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見晴らしのいい場所に建てられた一軒の宿屋。
そこが母の仕事場だった。
「こんにちわ!」「おっ!宿屋の若君が来なすった」「おぅ、ボーズ!他国の話を聞かせてくれ。」「女将さん!坊用に飯追加だ!」「おい、こっち飲み物追加な」
昼時になると宿屋は食堂も担っており客人が押し寄せてくる。
「はい、少々お待ちくださいね。」
その台所をたった一人で切り盛りするのは自分の母だった。
体の弱さを見せない働きっぷりで料理を次々と作っていく。
「はい!お待たせしました。ゆっくり食べてください」
溌剌とした笑顔がこぼれ皆が赤面する。非常に不愉快である。