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[イケメン王宮]グッバイ!racrimosa

第1章 序章


これ以上国王の不興を買うまいと官僚は部屋を辞した。
「ウィスタリアからの情報はどうだ?」
いくらか平静さを取り戻した様子の王が問いかける。

「西の国を捜索したそうですが、見つからなかったと。捜索の範囲をもう少し西に広げるとだけ」
「そうか・・・・。ユーリ。ウィスタリア国王に感謝状を届けてくれ。こちらも東の方を探しているとも」
「はい。ゼノ様」
ユーリは明るい口調で応えた。その顔には疲労が色濃く浮かぶ。
先程まで、捜索部隊を率いていた為であった。
その上、ユーリは元々はシュタインの騎士とはいえウィスタリアでステラの執事 を務めていた経歴のため伝令役としても動いていた。

「ステラ様一体何処にいるんでしょう。結構遠くまで探してるのに何の情報もないし」
6年前ウィスタリア西の辺境にある森に入ったと言うのが最初で最後の情報だった。 それも野盗から逃げ惑い森で行方が分からなくなったとその野盗の情報も最初の情報を聞いて5日後同じく途絶えた。
野盗達に攫われたのか、森を無事抜けられたのか、それすら不明だった。
「何処にいても必ず見つけ出す。一生かけても、どんな結末でも」
国王は沈痛な面持ちで右目を覆う眼帯に手を重ねる。それがいつもプリンセスが国王にしていた愛情表現の一つだった。
彼女が消息が絶たれてから、国王はいつも寝る間を惜しみ行方を探し、愛しい女の身が無事である様に神に祈っていた。

誰も愛する事がないだろうと言われた氷の国王を優しく溶かした春の姫。
氷の国王の願いを神は聞き入れてくれているのか、それとも既に、
不安か胸をよぎるのを拒否する様に思考を遮断し、国王に一礼する。
「くれぐれもウィスタリア国王に失礼のない様に」
眼鏡をかけた長身の騎士が静かにユーリにそう言った。
「大丈夫だよ。ルイ様とは仲良しだったしアルと違って俺、愛想いいから」悪戯が成功した子供の様に得意げな顔で言うとアルと呼ばれた男は少し眉間に皺を寄せる。

あぁ、このやり取りをしたらきっとあのヒトはキョトンとして微笑むんだろうな

「くすくす・・・」

そうこんな風に少し声を押し殺し、小鳥のさえずりのように

「え・・・?」

ふと、扉を見て心臓が一瞬強く脈打った
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