第4章 導きの星は誰を照らす
村の人達に他国で見聞きした事を教える。
「かっー都会だな。いーねぇ。俺も畑と狩がなけりゃ行くのに」「オメェが執事様って玉かよ?精々、売れない大道芸人だろ?」
「うっせー、俺らは大道芸人だろうがなぁ、ウチのカーちゃんは世界一の美貌だ。きっと都会の奴ら度肝抜かすぞ!何せ美人のネェちゃんがこーんな獣見てーな旦那引き連れて歩くんだから」「おめんとこのカカァは怖いからな女伊達ら鷲使って狩に参加するからな。まっ!俺の嫁さんの方は可愛い上俺みたいなダンディな男と一緒にいるんだ注目の的だぞ」「おぅお前の所は確か子供みたいにちっさい上童顔だからな、お前子攫いと間違えられるな」と、大概その町の話を引き合いに嫁自慢を仕出す。この村の男達は嫁自慢が趣味なのだ。ちなみに村以外の余所者相手には村と村人、他国の人達には加えてお国自慢を延々と聞かせる。・・・・お喋り好きのおっさん達である。
「で、どうだったんだ?母ちゃんの故郷だったのか?」「わかんない」「何デェ〜、随分歯切れの悪い台詞じゃないか?」「いつもだったら『違ってた』ってな感じにはっきり言うじゃねーか。」そう。他の、アルス国王の執事見習いの時隣国に視察などに着いて回っていた時は必ずそう言っていた。なのに、今回はうまく言葉にならない違和感が邪魔して曖昧に答えるしかないのだ。
「で、薬師様のドレス姿どうだったんだ?綺麗だったろう」「村の女衆が夜なべして作った最高傑作だ。」「うん、綺麗だったよ。星が落ちて来たみたいに」シャンデリアに照らされた金色の髪に白と草染の青い上着はそれこそ星空の様だった。しかし、
「ははさまにきて欲しかった。」 心からそう思った。あの時来てくれたならどんなに嬉しかったか、あの服を着た母がどんなに美しいか、・・・・この違和感もきっと晴れるのに
「しょうがないだろ。お前の母ちゃん、宿の切り盛りで忙しいし、俺たちがやるって言っても 遠慮しちまうし、身体が弱くて村から離れられねえ」「分かってる!!!」
そんなの息子の俺が一番知ってる。けど、いつだって願わずにいられないんだ。あの日見たははさまの哀しむ顔を見て以来。
発作に苦しむ母が 唯一うわ言の様に紡ぐ言葉
「あいたい」と、そうははさまに言われる人間に。