第3章 里帰り
「あれ以来、あの狼にはあってないんだよね・・・。」
夜の森も狼も怖くて仕方ない。けど、あの白い狼にはもう一度会いたかった。あれはいくつの時だったか、確か3つだった筈だ。夕方までとはいえよく森に入ることを大人たちはよく許可してくれたものだ;すごい大らか・・・。
「そういえば、昔、納屋でボヤ騒動起こしたり、木登りして降りれなくなったり・・・」
シコタマ怒られながらも、悪戯をやめないやんちゃっ子だった。否、今でも多少・・・ちょっとだけ、・・かなり悪戯するけど・・・あの騒動以来。夜の森を訪れることはなかった。
「狼の話・・・そういえばだれにもしてない・・」
夢だった気もするし・・・、しかし、
「ははさまは話したら楽しんでくれそう・・。」
あの日見た真っ白な狼は母の様に美しい白と金色だったから・・。
―――――――ピィュッーーーーーーー!!
少し怒ったようなレグルスの声がする。降りてくると鉤爪で軽く頭を蹴られる・・・。
「ごめん、レグルスも綺麗だよ」そう言って撫でると満足げに目を細める。僕が一番じゃないと気がすまないっといった感じだ。
こいつと逢ったのは一年前だ・・・・昼の森に入り白い狼を探していた時、まだ雛鳥だったのを見つけた。
怪我をしていて慌てて村に持ち帰るとすぐに森に帰すように言われた。
納得できなかった。村の多くの男達は森の獣や鳥たちを必ず一匹引き連れていた。古くからこの村の部族は森の生き物たちと共に猟をしていた。多くは狼、鷹・・・鷲とて珍しいものではない・・・・なのに、駄目だった。
何故と問いかけても何も言わない・・・俺は逃げるように家に戻りははさまに相談すると少し考えて雛を手のひらに乗せ僕を見た。
『貴女の弟です。ちゃんと、お世話できる?』そう問いかけられた。僕は強く頷いた。すると母は微笑んで抱かせてくれた。
「けっこう大変だったんだよね。食い意地張ってるし、我儘だし、なかなか怪我治らないし」
傷が治らないのに一著前に飛ぼうとするし嫌いなお肉は絶対食べない、必ず毛づくろいしないと怒るし、俺のお皿のご飯横取りするし・・・本当に弟の様だ。
でも―――
天を駆ける白い大きな翼の相棒・・・。
その名に違わぬ『王』の風格だった。
「本当に綺麗だなぁー。」