第3章 里帰り
カラカラカラ・・・・・
糸車をゆっくり回す・・・木の擦れる音が耳に心地よく届く・・・。
繕い物や刺繍位なら嗜み程度していたがまさか生業になるとは・・・・・・そんなことを思いながらも、せっせと糸を作る・・・。
愛しい子が生まれたばかりの頃はまだ不慣れで糸の太さがまばらだったり糸が切れてしまったり、落ちた糸玉を拾おうとして転んだり・・・・傑作はうたたねしながら糸車の針先に頭ごとダイブした時だ・・・。あの時は痛かった。
目の前でそれを見ていた愛しい子はきょとんとした顔をして私の顔を見てニッコリ笑ったのだ。
愛しくて可愛い大切な私の宝物・・・。今はどうしているだろう・・・?定期的に書いて届けてくれる文はこのニ週間来ない・・一週間おきに届くのに
何かあったのだろうか・・・・?逢いに・・・行くべきか??
そんなことを思いながらも首を振る・・・。二度と戻るわけにはいかない。わかっている、そんな事許されない・・。
それでも子供が旅立ったあの森を見てしまう。
「・・・・!」
森の上に白い鳥を発見する・・・雄々しくも荘厳な・・・
たまらず、家を飛び出す。
「お?」「あれま、どうしたんだい??」「そんなに走っちゃぁ体に障るよぉ」驚いた顔で村の住民声をかけてくる。
「ご心配なく!」
普段なら一、二言告げるがその余裕はない・・・。
森の入り口まで走ると丁度森から白い影が向かってくる・・・その陰に隠れるように佇む小さな影・・・・
驚きと歓喜に満ちた声で愛しい我子の名を呼ぶため口を開く・・・。
村に入る前に白い狼に会った場所に贈り物として押し花にした花のしおりを添えて行くと少しだけ予定の時間より遅くなった、といっても、村の人には今日帰ってくるとは告げていなかった。サプライズである。もうすぐ村の入り口だ。
薄暗いところにいたから少し目がくらむ
『ルプス!』
聞きたかった優しい母の声が森の向こうから聞こえてきた。陽光を受けキラキラと輝く白い髪と金色に輝く星のような瞳・・・顔は驚きに満ちていたが自分を呼ぶ声はひどく優しい瞬く星・・・星の精かと思うほど可憐で綺麗な
「ただいまっ!ははさま」
世界で一番、大好きな母が立っていた。駆け寄り抱きしめるとカモミールとミモザの優しい香り、優しく頭を撫でる手
「おかえり・・・愛しい子」