第3章 里帰り
今夜は星が見えないなぁ。そんな事を思いながら母国の王城を歩いていた。こうして歩くと愛する妹の残像にでも会えるかと考える。
しかし、あるのは主人を失い物悲しげな雰囲気だけ。
信じられないこの一言につきる。心優しい妹がプリンセスに選ばれたのは誇らしくも感じるが、けして良かったとは思えない。その点で兄のした行動は多少なりと評価する。だからこそ・・・
「・・・・!」
腰の辺りに予想外の衝撃に、前のめりになるも持ち堪えた。
腰に回る震えた小さな手と嗚咽に濡れた声。
「どうした?こんなに泣いて何が不安なの?」
膝を折り曲げ深紫の目元から雫を拭ってやる。 いつも母御が彼にしてやっていたように
「はは、様は・・・ほんとうに、この、国、のプリン、セスなのですか?ルナ様の、妹なの??・・ぼく・・・は誰なの?とう・・さ・・は?」
母御はけして、自分の子の片親について話さなかった。しかし、おそらく・・・
「それは、母御に聞くべき事だ。私は何も聞いてない。・・・・大丈夫。ルプスはアルス国の子だ。私達の村住人の大切な子供であの子の・・・母御のたった一人の大事な宝物だ。それだけはちゃんと覚えておきなさい。」「・・・・うん」
この子の母御はいったいどうするつもりなのだろう。運命はすでに動きだしているというのに・・・・・六年間一緒にいるというのに彼女の心を推し量れずにいる。
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
シュタイン城の中庭『星降る庭』に佇む一人の男
この国の王『ゼノ=ジェラルド』だった。
この庭の名をつけたのは愛しい人だった。
―――――――ゼノ様!見てください・・・噴水の水面に星が―――まるで星が降り注いでいるようですね。
「・・・ステラ」甘く愛しい人の名を囁いても残像はこちらを振り返らない・・・。あの舞踏会の日から一月が過ぎた・・・いまだ見つからない・・・深いため息をつくとふと甘い香りがした・・・懐から取り出す、出てきたのは小さなサシェ・・・。
「返しそびれてしまったな。」
自分とよく似た面差しの少年・・・・最初にあった時とは全く違う印象だった・・・。だが――――
「アルバート、ユーリ。ウィスタリアに文を飛ばしてほしい」
どうしても目をそらせられなかった・・・。