第3章 里帰り
「知らない。家出てから妹とは文通してはいたけど8年前から手紙は途絶えてた。それで、その件がこの子の生みの親と何の関係があるわけ?」「おい!ソル!どういうことだ!?ステラがプリンセスに選ばれただと!?それじゃあお前!7年前知っていたのか!?」「・・・・・。ステラがプリンセス・・・・?」
顔を赤く染めて憤慨する父とは対照的に母の顔は紙のように白くなっていた。だから話したくなかったのだ。だから7年前、遠方の貴族の家庭教師をしに行ったと嘘をついた。プリンセスが誰かも徹底的に隠した。
「あの子がいきなりいなくなって、母さんがどれだけ心配したと思っている!?その上、儂らに嘘までついて・・・!」「・・・・。」弁明する気はない。瞑目しても憤慨している様はありありとわかる。ひたすら殴られるのを待ってると
「何?何も言ってなかったわけ?私がシラを切るまで隠し通すつもりだったと?それで『心配してます』なんて聞いて呆れるわ。結局兄さんは何も心配なんてしてないのよ。」「なっ!?違うっ!!」
「違わない。いや、もし違うとしても内心は帰ってこなくても良いと思ってた。プリンセスにされる位なら行方知れずでも、父さん達に話さなかったのは秘密裏に帰ってきた場合、何も知らせずにいれば遠方の国に高跳びさせやすいとか考えてた?」「・・・・」
「母さん達を心配してなんて嘘。兄さんは自分の心配しかしてない。傷つくのが見たくない。遠ざけたい。当たり前の事だけど身内にすら本心ひた隠しの人間にどうして言えると思うの?子供だから何でも湾曲に聞けば、ボロが出るとでも?」
侮蔑を込めた視線はソルだけではなくシド達やその場で動かずにいた全員に向けられた。
「ルプス、悪いけど父さん達を連れて席を外して、ここの人達私に用があるみたい。城見学なんて滅多に出来る事じゃないから」
「えっ、あ、あぁ・・・うん。宜しければご案内します。どうぞ」 「儂は構わない。妻だけ頼むよ。」「父さんもちょっと離れてて、兄さんとヒートアップしたら場が収まらない。後で兄さんにそれとなく説明させるから」娘の言葉に眉を寄せるが深い溜息と共に夫妻や孫達は小さな執事に連れられ、会場を後にする。