第3章 里帰り
「あんたら、店どうした??つーか、なんでここに?」
「ルプスくんがお招きくださったのよ。自分で手掛けたリースを見に来れるなんて、ちょっと照れくさいわ」
やや白髪の混じった黒髪をまとめた簡素なドレスを纏ったご婦人は貞淑としていてその場の空気を和やかにした。
「わしは母さんの付添だ。お前も珍しいなぁ、あぁ孫に聞いた話だと武術大会で負けたから家族を連れて行くように言い渡されたんだったな?何故わしらを誘わない??」
「親父たちは家族じゃねー」「なにをぉ!!!!??」
相変わらずの親子げんかで荒んだ空気が一掃された。
「ルプスさん。お招きありがとうございます。国王陛下たちもこのような姿で大変お目汚しを・・・。」
「お世話になっている城下の花屋さんであのリースを作ってくれた方です。」
指差した方向にある薄紅と白の大輪の薔薇とブルースターとミモザが編みこまれた美しいリース。さながら月と星の煌めく夜空のようなリース・・・。
「選ばれなかったけれど、いちばん綺麗なリースだと思ったのでプリンセスにも一番よく見える所に飾ったんです。」
「ありがとう・・・・」淡く微笑む姿は少女の様に可愛らしい・・・。
「母さんの作るリースは綺麗だからな・・・なのにどうしてこうも跡取りに恵まれないのか、お前は手先不器用だし」「・・・男が花なんぞ編めるかよ・・・妹達に任してたし、おれ料理作る方が好きだし。大体、家出した妹が原因だろう。」
「あのリースを見て跡を継ぎたいと思ってくださる人がいればいいけれど、あれはプリンセスがいち早くお戻りになる様にと思って作ったものだから・・・。」
「今年は母さんが作った最高傑作のリースだきっとプリンセスも戻ってくるよ・・もしかしたらもう城に着いてるかもしれんぞ」「・・・・なわけあるか、くそ親父」
不意に、扉が開く音がした・・・。おかしいどうしてこんなにも耳に響くのだろう・・。
そう思い、扉を見ると・・・。
周りとは少し違う独特のドレス。簡素な白に鮮やかな金糸で刺繍が施された草染めの上着けして派手ではなくかといってみずぼらしくもない・・・。祖国の礼服だ・・・。
「・・・・・あ」