第3章 里帰り
「まぁ、彼が噂の・・・」「こんなにお若いのに・・」「大変優秀だとか・・・」「可愛らしいこと・・・」
ルイ様の傍らにいるとにこやかながら、不穏な空気、悪意に満ちた顔には羨望と物珍しさが見え隠れする。
予想はしていたし、どこにいても同じだ。
子供だからと侮られ、幼いからと軽んじられる。悔しくて仕方がない。
「ルプス・・・大丈夫?」ルイ様が心配そうにこちらを見る。
『ルプス・・・辛いことがあっても、堪えて、笑って見せなさい』
ははさまの言葉を思い出す。
「えぇ、ご心配には及びません。まだまだ若輩者の上、新参者・・・これからも誠心誠意お仕えいたします。陛下の信頼厚いご婦人方、旦那様方にもご教授いただきたく存じます。」
にこやかに笑ってみせると少し気まずげにその場を辞した。
「すまない・・・」ルイ様が何故か申し訳なさそうに言う。
「大丈夫です。それより僕の方が申し訳ないです。
年若いせいでルイ様がいらぬ誤解を招きそうですし・・・」「・・・・・・・・・・・・。」
「そういえば、シュタイン国王様は遅いですね。」
「彼は主催者であると同時にこのセレモニーの重要な客人だからね・・・。」「早く会ってみたいです。とても優秀な執事さんがいるとジル様やレオ様が言っていましたし」
話していると靴音がエントランスに響く、威厳に満ちた空気が重苦しい・・・・。
靴音の方へ振り返ると優しい微笑を浮かべるプリンセスの絵に深く膝を下り頭を垂れる男が三人・・・。一枚の絵画の様に神秘的で美しい所作・・・言葉を失っていると、まず中央の一人が立ち上がる振り返ると見覚えのある顔
相貌は彫刻のように美しく気品に満ち、その目は高貴な紫。そこにいるだけで空気が変わる・・・。
ゆっくりと階を下りていき、主催者であるウィスタリア国王にあいさつをする。
「すまない。遅くなった・・・。今年も招待感謝する」
あの夜に見た表情よりいくらか冷たい印象だった。